ホストファミリーとの運命的な出会い

　私のホストファミリーは、オベイダードという姓でヨルダン最北端部にあるホブラス村の教師一家でした。このオベイダード一族はヨルダン北部の有力な部族で親族の中には大臣や大学教師などを輩出している名門でした。

　母親のファーティマさんは男女別学の女子校の校長でイスラム女性には珍しく、留学経験がある女性でした。一般的にイスラム国の田舎では男性優先が顕著な中、学校経営の他にイスラム女性の自立を促したいということでパイロット事業としてアラブのハーブを栽培し、商品化して販売するＮＧＯを運営されたり、様々な女性のための勉強会などを主催したり、していました。

　夫のバダルさんは、村の男子校の教師でした。奥様を非常に尊敬しておられて「うちの奥さんは、エジプトの大学を卒業しているんだ。非常に素晴らしい女性だ。」などと片言の英語で自慢していました。バダルさんは、ヨルダンの地方の男性は保守的な人が多い中で珍しいくらいの愛妻家で奥さんの活動を支えていました。その姿は見ていて微笑ましく、ステレオタイプのアラブ人像を覆すものでした。

　このとき主にコミュニケーションをとったのが長男のアリ君で高校1年生でした。非常に優秀で後にイラク（この当時はまだイラクの潜在的力は大きく、アラブの先進地域だった）のバグダッド大学医学部に進学し、卒業してヨルダンで医師をしています。彼は流暢に英語を話し、オベイダード一家や村人との会話の通訳をしてくれました。アラビア語も教えてくれました。家族構成はバダルさん、ファーティマさん夫婦に息子が5人、娘が2人で長男が16歳、末っ子の女の子が5歳でした。

　年齢的には私は両親と子どもの中間くらいの世代でしたが、ヨルダン滞在中の2年間家族の一員として遇されました。ホームステイプログラムが終了した後も配属先の大学からバスに乗り、30分程で行けたので、しばしば遊びに行きました。大学の夏休みなどの長期休暇で就業時間が繰り下げられた期間には、ホームステイの続きとして1ヶ月位下宿して通勤してオベイダード家の人々とは非常に深い交流が出来たのでした。

オベイダード家の人たちと